会社設立に必要な書類と事前準備
何事も準備は大切です。ここでは、会社を設立する際にやっておきたい事前準備と書類をご紹介します。これを怠ると、手続きの途中でつまずいてしまったり、単純な作業ですら難しいと感じてしまうかもしれません。
いずれにしても、会社を設立するまでに避けられない作業ですので、手続きを漏れなくスムーズにするためにも、事前に取り組むことをお勧めします。
法人の基本事項に関することを検討する
おおまかに、会社名、本店所在地、事業内容などを検討する事です。法人の基本事項についての詳細はこちらをご参照ください。
本店の住所を用意する
本店と呼ばれる、会社の所在地を決める必要があります。場所は自由ですが、会社が存在できる場所が前提になります。候補としては、自宅・店舗・事務所などになりますが、賃貸でも構いませんし、必要があれば自己所有の物件を検討しても良いと思います。
賃貸の場合は、トラブルのもとにならないように、その場所で会社を経営することについて大家さんの承諾を得ておくようにしてください。大家さんに相談すべき内容としては、賃貸の使用用途が事業用であり、部屋の使用状態の予定の承諾、経営する業種や事業規模などへの理解が挙げられます。その取り決めた内容を、契約書に記載することも忘れないようにしてください。
会社の場所は、会社を運営していくうえで、できる限り有利な場所が望ましいです。検討したい内容としは以下のとおりです。
- 自宅で開業する場合、業務を行うスペースと独立性を確保できるコト。
- 店舗を営む場合、必要な売上を達成するために、十分な集客が見込める立地や接客に必要な広さがあるコト。
- 事務所を開設する場合、通勤しやすかったり、得意先がアクセスしやすかったりするコト。
資本金の金額を決めて用意する
資本金の金額は1円以上とすること以外に、特に決まりはありません。つまり、1円でも設立は可能です。資本金は設立後に増額することも可能ですが、その際の手続に縛りがあったり費用がかかったりします。何より二度手間となり、時間を無駄にしないためにも、下記の内容を検討されると良いと思います。
- 資本金として集められる金額
- 事業の経営上、必要な許認可の要件となっている金額
- 会社設立から経営が安定するまでに必要と想定される金額
- 同業他社などの標準的な資本金の額
- 資本金額による会社規模の判定のメリット・デメリット
- その他の条件など…
余談ですが、資本金というのは、会社設立時に用意された事業用の元手資金のようなものです。会社自身にとっては、経営をしていくための必要資金といえます。また、取引先や銀行から見ると、資本金は会社の規模や信用度を知るための情報の一つといえます。必要以上に悩むことは無いと思いますが、これら内容を頭の片隅にても置いておくと、資本金の金額についての方向性が見えてくるかもしれません。
※重要! ~資本金を決める際に絶対注意したいこと~
- 資本金とは、会社の経営のための資金であり会社のモノです。資本金を出資者に返済するということは絶対に不可と心得てください。
- 資本金の額により制約を受ける場合があります。その代表的なものが1,000万円の基準です。(法人の均等割りという税金が7万円から18万円に増額になったり、消費税の免税事業者になれず消費税の負担となったりします。)
株式に関するルールを定める
資本金とも密接に関係するのですが、資本金を出資してくれた人が、その見返りとして得る権利のことを株式といいます。設立時に決める株式に関する項目は、おおむね以下の内容になります。株式会社は、株主が決定件を持つことになります。発行している株式の3分の2以上を保有することで、会社のほとんどの方針決定をする事が可能となります。
- 設立時に発行する株式の数
- 一株あたりの金額
- 発行できる株式の最大数
- 株式を譲渡する事に制限をつけるかどうか
定款を作成する
上記の基本事項を盛り込んだ定款を作成します。定款をご自身で作成することは可能ですし、インターネット上でひな形を入手する事も可能です。出来上がった定款に、発起人が押印・割り印をしたものを3部正本にして完成です。
登記申請書に記入する
法務局に提出する、会社設立の登記申請書を作成します。書式は法務局のホームページでダウンロードできます。
必要な印鑑を作る
設立時に必須なのは実印ですが、いずれ作成した方が良い印鑑です。また、これらを4点セット価格で購入できる場合もありますので、まとめて作成しておく事をお勧めします。
- 法人の実印
会社を登記する際に必要な印鑑。重要な契約などで使用が求められる印鑑。役所で印影を登録するので、 - 法人の銀行印
法人設立後に会社口座を設けるための印鑑。会社設立後でもOKです。 - 法人の角印
会社の認め印のようなもの。請求書や文面に捺印することで、会社が発行したものである事を表示する効果がある。会社設立後でもOKです。 - 法人の社判
会社名や住所、電話番号を捺印できるゴム印など。手書きでも問題ないのですが、記入する手間や見た目の面で用意しておいた方がよいと思います。 - 発起人の実印
実印として登録する印鑑を用意します。発起人が住民登録をしている市区町村で実印としての登録をして、いつでも印鑑証明を取得できる状態にしておきましょう。 - 取締役となる者の実印
各種証明書を用意する
- 発起人の印鑑証明
取得後3ヵ月以内の印鑑証明を用意してください。最低3通は取得してください。公証役場での定款認証時に1通、法務局での会社設立登記時に1通、会社の控として1通です。印鑑証明は、発起人の住民登録をしている市区町村で取得できます。その前に、実印の登録をしてある必要があります。 - 取締役となる者の印鑑証明
- 発起人の身分証明書
- 運転免許証または健康保険証でOKです。
- 委任状
発起人が複数の場合に、公証役場や法務局の手続きに同行できない発起人の委任状が必要です。
定款と登記すべきことを保存するCD-Rを用意する
定款は公証役場で認証を受ける必要があります。その内容は、用意したCD-Rに保存されることになります。
資本金の払い込みをする口座を用意する
資本金を入金する口座を用意しましょう。この時点では法人の口座を持つことができないので、発起人の個人名義の口座になります。この口座は、もともと持っていた口座でも、会社とは無関係の入金・出金がある口座でも構いません。とはいっても、設立する会社の適正な経理などの視点から、専用の口座を新規開設することをお勧めします。
資本金の入金済の通帳コピーを用意する
公証役場での認証が完了した後に、用意した口座に資本金を入金します。必ず、定款認証の後に行ってください。コピーする部分は、表紙、表紙をめくった個人情報記載部分、資本金の払い込みが記帳されたページになります。
会社設立の諸費用を把握する
諸々の費用を考慮すると、約25万~30万円が平均的と考えられます。ご自身で作成される場合は、役所への費用のみで下記の24万2千円かかる事になります。矛盾する話なのですが、これを専門家に依頼した方が安くなるケースがあります。その理由は、電子定款という手続きにすると収入印紙代の4万円が不要となるからです。専門家の手数料が4万円満であれば、ご自身で手続きするよりも安く・確実にできるという事になります。
- 公証人の手数料 5万円
- 収入印紙 4万円 ※1
- 定款の謄本手数料 2千円前後
- 法務局への登録免許税 15万円 ※2、※3
※1 電子定款認証の場合は不要になります
※2 正確には、資本金額の0.7%と15万円のうち高い方になります。
※3 登録免許税は、A4用紙に貼り付けて提出してください。
まとめ
以上が会社設立に必要な書類と事前準備になります。会社設立の手続きをスムーズに行うには必ず必要な内容になりますので、余裕をもって準備するようにしてください。なかでも重要なのは、会社の基本事項を検討することです。これから目的のために関わっていく大切な会社になるので、十分考慮することをおすすめします。
おさらい
- 事前準備
- 基本事項の検討(会社名、事業年度、株式について、事業内容)
- 本店所在地の検討
- 資本金額の検討
- 市区町村への印鑑登録
- 必要書類
- 実印(法人、発起人、取締役)
- 印鑑証明(法人、発起人、取締役)
- 設立関連費用(資本金、諸費用25万円前後)
- CD-R