前編の記事では、『持続化給付金』の不正受給になり得るケースと疑われやすいパターンを紹介させていただきました。後編では、不正受給に該当する可能性がある場合に、とるべき行動例を説明させていただきます。
実際に報道された不正受給のニュース
- 学生が個人事業主を装って不正受給
→ 詐欺容疑で逮捕 - 学生が個人事業主として架空売上を記入して不正受給
→ 詐欺容疑で逮捕 - LINEなどSNSの口コミで募集した学生や主婦に個人事業主を装わせ、架空の確定申告書や売上書類を作成して不正受給させたうえで、手数料として給付金の3分の1の金額を受け取っていた業者。
→ 業者を詐欺容疑で逮捕(不正受給に乗せられた申請者の状況は不明) - 企業の従業員を個人事業主として装って、虚偽の確定申告書などの書類を用意させて不正受給をさせたうえで、給付金額の3割程度の手数料を得ていた業者。
→ 詐欺容疑で捜査中 - 新聞社の社員が『持続化給付金』を虚偽申請し不正受給
→ 新聞社が不正受給社員に対して返還等の指導・処分 - かんぽ生命の販売員がコロナとは無関係の売上減少を理由に不正受給
→ 会社が販売員に対して返還等を指導 - キャバクラグループの経営者が、給与受給者であるキャバ嬢を業務委託だったと都合よく解釈し不正受給をさせたうえで、手数料を20万円を受け取っていた。
→ 処分等の詳細は不明
※1および2の者は、『持続化給付金』の不正受給の詐欺容疑以外に、別件の詐欺に関与しているとして調べを受けているとの情報があります。
もしも不正の可能性がある場合に何をするべきか
まずは落ち着いて状況を整理してください。不正受給になるのは、申請要件を満たさない事を知っていたにも拘わらず給付金を受給した場合です。単純なミスや勘違いの場合や、代行業者に丸投げして不正の事実を知らなかった場合は、結果として受給が適切では無かった状況にあたると思います。この場合は、正しく対応して最悪の状況を招かないようにしてください。さらに、後から受給が適切では無かったことを把握したうえで放置した場合は不正受給に該当すると考えてください。
現在ニュースになっているケースは、『持続化給付金』の不正受給単体での逮捕ではありません。つまり不正受給者をしたからといって、直ちに刑事告発されて逮捕になるという状況ではないと思われます。だからこそ、誤った選択をすることが無いように、やってはいけない事を説明させていただきます。
やってはいけないNGな対応
- 誤りや不正を隠すために、新たな不正行為に手を染めてしまう。
- もし調査部門のヒアリングや調査を受ける事があった場合は、真摯な対応をすることはもちろんのこと、あいまいな回答や偽りの回答をしないこと。
- 代行業者のアドバイスや誘導で不正受給をしてしまった場合、その者を信用しないこと。新たな詐欺を受ける可能性や、悪質代行業者に利用されたり、より不利な状況に陥れられる恐れがあるからです。
- 不正受給を何とかします等の甘い言葉にのらないこと。最近の詐欺でありがちな話ですが、詐欺グループが顧客リストを別の詐欺グループに売り渡して、さらなるカモにされてしまうケースがあるからです。また、不正受給自体を無かったことにすることは不可能です、できるのは誤った選択を避けることで不利な状況や最悪の結末を回避することです。
状況別の対応例
もしご自身が不正に該当すると疑わしい場合や申請上の誤りが不安な場合は、以下の内容を参考にしてください。正解は無いですが、少なくとも事態をより悪化させないヒントにはなると思います。
どのパターンでも共通すること
- 必ず『持続化給付金』の窓口に連絡して必用な指示を仰ぐ
- 連絡をする前に、伝えるべき内容と状況を整理する
- 相談できる人がいる場合は話を聞いてもらう
①アドバイスをもらえる
②自分の気持ちを落ち着けて整理する
③『窓口』への連絡のシュミレーションになる - 『窓口』へ連絡をする場合は、申し訳ない気持ちと誠実な態度で臨む。
- 『窓口』への説明は簡潔にする
①偽りの説明をしない
②無関係な話をしない
③あいまいな表現をしない - 給付金の返金手続に至った場合に、R2年12月までに受給要件を満たすことができた場合は、そのタイミングで『窓口』に相談する。
不正ではなくミスや勘違いの場合
ミスなどの場合、訂正は必用ですがペナルティは軽微な形になるはずです。ただし対応を間違えてしまうと、不正とみなされて取り返しがつかなくなるケースも考えられます。慎重かつ誠実な対応を心掛けてください。また、誤りに基づいて返金となった場合でも、その後に受給要件を満たした場合は申請可能になる可能性があるので、その時は『持続化給付金』窓口に相談するようにしてください。
- 誤りを訂正したとしても、受給要件を満たす場合。
『持続化給付金』の窓口に連絡して、申請上に誤りや変更が生じた旨を伝え相談し指示に従う。基本的には不備の訂正のみで、返金等の話にはならない事が予想されます。
- 誤りを訂正した場合に、受給要件を満たさなくなる場合。
持続化給付金』の窓口に連絡して、申請上に誤りや変更が生じた旨を伝え相談し指示に従う。申請の取り下げと返金等の手続になると予想されます。この場合は、違約金の2割加算は状況により判断される事になると思われます。
- 申請代行を依頼した場合に、ご自身の手続に誤りがあった場合。
申請代行者に相談して、状況の整理と今後の手続について打合せをします。自身にミスがあった場合でも申請代行者に方針を任せ、必要に応じて自分で訂正手続をするようにしてください。法にかかわるような難しい問題が生じた場合は代行者の意見も聞きつつ、法律家など別の専門家にも相談してください。
- 申請代行を依頼した場合に、代行者に誤りがあった場合。
申請代行者に相談して、状況の整理と今後の手続について打合せをします。また、申請代行者に責任の所在と補償など対応の説明を求めてください。必要に応じて、代行者に協力を求められた場合は、ご自身でも訂正手続を行う。代行者との対立や法に触れるような難しい問題が生じた場合は、法律家など別の専門家にも相談してください。
意図的な不正があった場合
不正が発覚した場合は、ペナルティから逃れる事は不可能です。ただし、不正の度合いや不正者の態度によって、罰則の重さが違ってくると考えられます。不正に気付き自覚がある場合は、先送りせず自主的に『持続化給付金』窓口に連絡するべきです。また、事態がより悪い方に転ばないように、慎重かつ誠実な対応を心掛けてください。
- 不正をしなくても受給要件を満たしていた場合
申請要件を満たしたとしても、不正受給と判断された場合は罰則を受けることになります。この判断に不服がある場合や救済されるべきやむを得ない事情がある場合は『持続化給付金』窓口と協議をすることをオススメします。その場合は、必要に応じて法律家などの専門家に相談するようにしてください。 - いいかげんな申請をしていた場合
いいかげんな申請をした場合、不正受給とみなされても文句は言えません。悪意の有無や、やむを得ない事情などはペナルティを決定する際に考慮される可能性があるので、『持続化給付金』窓口に相談するようにしてください。 - 不正受給の程度が重い場合(書類偽装、他人を利用、第三者と協力など)
この場合は罰則が非常に重いものになる可能性が高いです。『持続化給付金』窓口に報告する必要があります。場合によっては、事前に法律家などの専門家に相談しておくと良いかもしれません。※この判断は非常に難しいケースにあたりますので、よく考えて行動するようにしてください。少なくとも、これ以上の間違いは重ねないようにしてください。 - 他人の指示やアドバイスにより不正受給に陥った場合
指示やアドバイスの内容によりますが、状況や責任の所在を整理してください。その際に、指示やアドバイスを出した者にも連絡をとってください。この場合も、『持続化給付金』窓口に報告する必要があります。指示の内容が法に触れる場合や自身が陥れられる内容の場合は、事前に法律家などの専門家に相談することをオススメします。詐欺や犯罪に巻き込まれている可能性や二次被害も予想されるからです。
まとめ
今回は『持続化給付金』の不正受給の調査についての記事でしたが、正しく申請していれば問題となる事はありません。ほとんどの人には関わりのない話だと思います。念のため、ご自身の申請が正しかったのか、誤りはなかったのかなど見直しをされる場合は、この記事を参考にして頂けると幸いです。
もし結果的にミスや不正の存在に気付いた場合は、落ち着いて状況を整理するようにしてください。けっして誤った行動をとってはいけません。『持続化給付金』窓口に連絡して誠実な対応をするようにしてください。
参考
『持続化給付金』返還に関する相談・受付コールセンター
直通番号:0120-115-570
IP電話専用回線:03-6831-0613(通話料がかかります)
日曜日~金曜日8:30~19:00(土曜日祝日を除く)
経済産業省 『持続化給付金』不正受給注意喚起ポスター
経済産業省 『持続化給付金』ホームページ